姥桜咲くや老後の思い出。
波の花と雪もや水の返り花。
我も神のひさうや仰ぐ梅の花。
霰聞くやこの身はもとの古柏。
笑ふべし泣くべしわが朝顔の凋む時。
僧朝顔幾死に返る法の松。
露とくとく試みに浮世すすがばや。
山路来て何やらゆかし菫草。
古池や蛙飛びこむ水の音。
旅人と我が名呼ばれん初時雨。
冬の日や馬上に氷る影法師。
香を探る梅に蔵見る軒端哉。
春の夜や籠り人ゆかし堂の隅。
若葉して御目の雫ぬぐはばや。
世の夏や湖水に浮む浪の上。
夏草や兵どもが夢の跡。
物書いて扇引き裂く余波哉。
七株の萩の千本や星の秋。
涅槃会や皺手合する数珠の音。
数ならぬ身とな思ひそ玉祭。
奈良七重七堂伽藍八重桜。